quadratureのシニカル日記

イヤなことは壺の中に

医者が自分のBlogのためにクビになる


水戸の病院の医師が患者の悪口を書いたり酔って手術をしたりしたことをblogに書いてクビになった。もちろん、匿名のblogなのだが、誰かからか指摘があって、病院側が医師に尋ねたところ自分のblogであることを認めたため、懲戒免職にしたらしい。

問題は「悪口を書かれた患者本人あるいは周囲の人物が自分のことだと特定できるかどうか」だと思うのだが、山系新聞の記事では「匿名だが本人が読めばわかる」と書いている。このblogだって(悪口は書いていないと思うが)、誰かが「詳細に読めば自分のことだとわかる」と訴へて来るかもしれぬ。

もし、匿名の記事でも絶対にダメというのであれば、臨床医師は学術誌に論文を書けないということになってしまう。確かに患者のナイーブな心境としては、たとえ純粋に学術的なものであったとしても自分のことをネタに原稿を書いて、その上、その医師の業績が上がるというのは納得できないものがある。しかし、治療の進歩に役立つ研究論文を書くな、とは絶対に誰も言えないはずだ。

現時点ではblogを書いた医師側が一方的に叩かれているようだ。自分もMDは好きじゃないのでざまあ見ろと言う気持ちもないではないが、良く話を調べてみると、病院側もかなり問題を抱えていて、酔っ払ったその医師に手術をさせてしまった、ということや、記事の匿名性を無視して「本人が読めば判る」と結論してしまったこと、さらに、病院側は「患者に謝罪する」としているが、何も知らなかった患者を呼び出して、「あなた、匿名でこういう悪口言われてましたぜ」とわざわざ伝えることが正義と言えるだろうか。今後、情報のリーク源や、匿名の文章に医師の責任があるか、医師法に触れるかどうか、などを巡って裁判になるような気がする。

あと気になったのは記事の文章に「医師のHP」という言葉が使われていたことだ。この表現「HP」を現在使うということは、記者はインターネットのことを殆ど知らないということを意味していると思われる。web上のニュースサイトでも伝えているのは山系とgooだけ(gooは山系)というのが何ともはやという感を拭えない。

少し前に、外国でそういう話(Blogでクビ)があったというニュースを聞いたので、ついに日本でもか、という気がしたが、匿名でも本人を特定できればダメ、というのは結構厳しいかも知れないが、やはり、blogは自分をさらし者にする快感─ザドリフターズのコントのような─を味わうのが目的であって、他人の悪口を書くべきではないのかも知れない。